モーツァルト:ホルンのための作品集

モーツァルト:ホルン協奏曲は既に30枚以上のディスクを持っているが、新譜を見ると買わずにはいられなくなる。今回はホルン協奏曲集のディスクではなく、「ホルンのための作品集」と題されたアルバム(GLOSSA)、録音は2006/6~2008/7 ブレシア(イタリア)、フェーネンダール(オランダ)、マドリッド(スペイン) 。
トゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールトという人(18世紀オーケストラ/フライブルク・バロック・オーケストラ首席)がナチュラルホルンを吹いており、ブリュッヘン&18世紀オーケストラ他の演奏家たちが協演している。
収録曲は下記の通り。
○ホルンのための12の二重奏曲K487より第8番アレグロ
○ホルン五重奏曲 変ホ長調K406
○ホルンのための12の二重奏曲K487より第7番アダージョ
○ホルンのための12の二重奏曲K487より第2番メヌエット(アレグレット)
○歌劇「ポントの王ミトリダーテ」K87より第13番アリア<あなたから遠く離れて>二長調
○ホルンのための12の二重奏曲K487より第3番アンダンテ
○ホルンのための12の二重奏曲K487より第12番アレグロ
○ホルン協奏曲第3番 変ホ長調K447
○ホルンのための12の二重奏曲K487より第9番メヌエット
○ホルンのための12の二重奏曲K487より第5番ラルゲット
○「音楽の冗談」 ヘ長調K522
○ホルンのための12の二重奏曲K487より第4番ポロネーズ
モーツァルト:12の二重奏曲K487(K496a)は1786年の日付があり、楽器指定はないため通常はホルンにより演奏されるが、以前はプリンツとシュミードルのバセットホルンによるデュオもあった。楽譜はすべてハ長調で書かれているが、ホルンで演奏する場合、管を差し替えれば何れの調でも可能になる。

このアルバムの最大の特徴は、このデュオが調を変えて巧みに配列され、ホルン・クインテット、「ミトリダーテ」のアリア、第3番のコンチェルト、「音楽の冗談」の4曲を見事に融合させていること。まるで「展覧会の絵」のプロムナードのように、曲から曲へのつなぎの役割をものすごくうまく果たしている。
第8番アレグロ(Es管)はクインテット(Es管)の序奏のようであり、続く第7番アダージョはC管に代わり、そして次の第2番メヌエット(D管)から絶妙なアタッカで開始される「ミトリダーテ」のアリア(D管)、そして二長調に行ってしまった調性を再び変ホ長調に戻すために、第3番アンダンテ(C管)をはさみ第12番アレグロ(Es管)を経て第3番のコンチェルト(Es管)が開始される。このアレグロの余韻とコンチェルトの開始の「間」も素晴らしい。
そして、第9番メヌエットをB管にし、続く第5番ラルゲットをF管にして「音楽の冗談」(F管)に受け渡し、最後の第4番ポロネーズはこのアルバムの基(主)調だったEs管に戻して終わるという心憎い演出。
このような構成で大いに感心させられた。この曲順を組み立てた人は素晴らしく優れたセンスを持っていると言わざるを得ない。そして、このような既存の作品の再配置と再構成もまた一つの「作品」になるということを実感した。このディスクはつまみ聴きすることなく一枚を通して鑑賞するべく創られていると思う。
そして、このアルバムのもう一つの特徴は、「ポントの王ミトリダーテ」(1770年:モーツァルト14歳の時に作曲されたオペラ・セリア)の第13番のアリアが収録されていること。父の婚約者への叶わぬ愛を歌うシーファレ(ミトリダーテの次男:ソプラノで歌われる)の「もし、あなたが望むなら遠くへ去ります」というアリアで、めちゃくちゃ素晴らしいホルンのオブリガートが付いている知られざる名曲。以前、誰かのソプラノ・アリア集(PHILIPS)にこの曲が収められていたことがあったが、それ以外では全曲盤を聴くしかない。そのディスク、確かに家にあることは間違いなく、一通り探してみたのだが発見することはできなかった・・。

さて、肝心のこのディスクの演奏について。
最も優れていたのは、12曲中8曲が収められているデュオ。バセットホルンや現代ホルンで演奏されると音があまりにも均質化されてしまうが、ナチュラルホルンの演奏だと、低音域での音の広がりやハンドストップによる音色の変化など大変面白く聴ける。トゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールトとエルヴィン・ヴィーリンガによる演奏は、時に音程は完璧ではないところがあるものの大変素晴らしい。
「ミトリダーテ」のアリアを歌っているクラロン・マクファデン(ソプラノ)の滑らかな声と伸びやかな表現も好感が持てたが、ナチュラルホルンの荒々しさ(?)がややソプラノに勝っている感じではあった。そしてコンチェルト(K447)は、あまりにも現代楽器の演奏を聴き過ぎたせいか、ナチュラルホルンの演奏ではややその表現能力の限界を感じてしまう。演奏自体はもちろん素晴らしいのだが。

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