オペラ公演2022終了

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急激な感染拡大の中、3回のオペラ公演を終えた(7/23・24)。
演目はドニゼッティ:「愛の妙薬」全二幕。

今回はトリプルキャストによる初めての3回公演(土曜日に1回、日曜に2回)
スケジュール的には、
金曜:A組GP、B組GP
土曜:C組GP、A組本番
日曜:B組本番、C組本番
と、3日間で6回全曲通すという超ハードなものとなった。
これだけの長時間、集中や緊張を持続するというだけでもひじょうに疲れたのだが、
今回もう一つ悩まされたのが、
「このオペラの中で最も有名な」アリアである「人知れぬ涙」。
(私もこの曲だけは以前から知っていた)
https://www.youtube.com/watch?v=qHdguVAsXis
ハープ伴奏*1に始まる開始8小節にわたるファゴット・ソロ。
テノールの最大の聴かせどころのアリアの前奏で失敗したら、いきなりぶち壊しになるし、最後の後奏(1小節)で失敗したらせっかくの名演を傷つけることになる、という大きなプレッシャー。
協奏曲などは自分だけの責任で終わるのでかえって気がラクなのだが、プロの声楽ソリストとの協演/伴奏というのは、ソリストの方のためにも絶対に失敗できないという大きなプレッシャーがかかってくる。

さて、このゆっくりしたラルゲット、フラット5つ(変ロ短調)の主題は(普段の環境の場合)とりたてて難しいものでもないのだが、問題はその曲の置かれた箇所。
第二幕のほぼ終わり近く、ファゴットのパート譜(全85ページ)の80ページになってこのソロが登場する。
ずっと吹き通してきて疲れ切っており、集中/緊張感も切れそうになったところでのソロには本当に悩まされた。

普段の個人練習あるいはオケ練習の時は、特に問題はなかったものの、延々と吹き続けた後にこの曲を吹くというのはまた別次元で、その機会はこの3日間のみ。
巧く吹けるかどうかは別として、とにかく「失敗しないこと(と言うか楽譜通りに吹く)」を目標にしていたが、2日目のゲネプロ時は、右手小指が滑ってFisを出し損ねるという失敗。
それでも、3回の本番では一応それなりの責任は果たすことが出来た。

その前の曲の後半はほとんど全休し、この曲に備えたが、短時間で疲労が回復するハズもなく、気力のみで何とか乗り切ることができた(倒れないで良かった)。
本番では何が起こるかわからないという意味でも、幸運だったと言えると思う。
本当にこのソロが巧く行くかどうかがこのところずっと心配で心配で仕方がなかった・・・。
無事に終えることができてやっと一息ついている。


オペラ公演は今回が9演目目*2となるが、毎回感じることながら、オペラというのは本当に楽しい。
オケの曲でも、聴くより自分で演奏した方が楽しいが、オペラの場合その楽しみも100倍となる。

何と言っても主役は声楽ソリスト。
声楽家の方々の演奏を聴いていると、器楽のソリストとは全く異なる凄さを感じる。
声の音色、声量、音楽表現自体はもちろん、加えて演技、振り付け、セリフなどすべて頭に入れての舞台ということで、楽譜を見ながら座って演奏するオケとはやはり別次元の存在とあらためて思った。

とはいえ、オケとしても普通のシンフォニーオーケストラとは比べ物にならない難しさがあることも事実。
特に歌や他の楽器を聴きつつ、頻繁に変わるテンポ、小節内/外での歌に合わせた伸び縮み:ルバート、フェルマータ、テンポの揺れ、間を取ったりする(例えば一小節の休止でもそこで歌手がどのように歌うかを知らないと次の小節に入れない)、それに伴う加速や減速、調性、拍子(いくつ振りか)、ダイナミクス、さらにはテナー/ヘ音記号の確認などを考慮しつつ、リアルタイムで(場合によってはそれより早く)処理、演奏に変換しなければならず、楽器の演奏技術のみならず視覚/聴覚を通じた脳の情報処理能力を問われることとなる。

オケ全体としても、歌手とのズレなど何回か事故が起こったが、奇跡的に(?)復旧したのはさすがと思わせるものがあった。
オペラに精通し、的確で分かりやすい指示を出しつつ全体を上手くまとめてくれた指揮者と、プロのコンマスの力によるところが大きかったと思う。
私自身、全般的に1~2回飛び出した他には目立ったミスもなく、指揮者の方が丁寧なキューを出してくれたせいもあり落ちることもなく一応何とか無事に終えることができた。

疲れたが本当に充実した3日間だった。
高揚感、一体感、充実感、満足感、達成感、至福感、感動など、これほどエキサイティングで素晴らしい時間を過ごせることは滅多になく、演奏をしながらあらためて幸せであることを実感した。
本当に生きていて良かったと思う。

*1)(私も知らなかったのだが)全曲中でハープが使われるのはこの曲一曲のみ
*2)「魔笛」「メリーウィドウ」「トスカ」「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」「カルメン」「こうもり」「椿姫」

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