小節をまたぐ付点

ハイドン:交響曲第70番二長調第4楽章に次のような記譜がある。
27小節目からフーガ(a 3 soggetti in contrapunto doppio/3つの主題を持つ二重対位法による)が始まる。
DSCN7847.JPG

さて、この28,30,32小節目に書かれた「・」は何なのか?
という問題。
ヘンレ版スコアには上記のように記載されているのだが、
Alonso del Arteという人が編集したパート譜には「・」の代わりに四分音符が書かれており、前小節の二分音符とタイで結ばれている。
また、ランドンによるHaydn-Mozart Presse版のスコアにも、27~28小節は同じように書かれている(下記239ページ)。
https://imslp.hk/files/imglnks/euimg/7/7c/IMSLP31746-PMLP72197-Haydn_Sinfonia_Hob_I_70,_D.pdf

「前の小節の音符とタイで結ばれた四分音符の省略形」という仮説の下にネットで検索してみるがまったくわからない。
仕方なく、周りの専門家の方々に訊いてみた。

「(バロックによく出てくる形だが)、一拍分は延ばさない/短く演奏する」
「当時の慣習表記で以下同文の意味」
「休符?」などなどの回答をもらう。
しかし、
作曲・編曲家 兼指揮者の方から、
「はっきりとしたことはわからないのですが」
という前提で、
「以前は、付点音符の付点は現在のように音符のすぐ横ではなく、追加される音価の場所に打たれていました。
該当箇所の譜面をよく見たところ、小節の最初にある「点」はそれぞれの音符の高さに打たれています。
このことから該当箇所の「点」は前の小節の音符につけられた付点で、前の音符の半分の音価の音符を示しているのではないかと思われます。
前の音符は2分音符なので、4分音符をその箇所に入れることになります」
という大変示唆に富んだ回答をいただいた。

ということで再びインターネットで調べてみた。
すると下記のような記述が見つかった。

https://www.mie238f.com/entry/2016/07/10/000000
上記中、タイの項に以下のように書いてある。

厳密に言うと、昔は付点で小節をまたぐこともあったようです。その場合、下図のように付点だけを次の小節に置きます。
付点.jpg

さらに、
https://www.finalemusic.jp/clubfinale/deepen/musicengraving_02.php#:~:text=%E7%AC%A6%E9%A0%AD%E3%81%A8%E7%AC%A6%E5%B0%BE,%EF%BC%89%E3%80%8D%E3%81%A8%E5%91%BC%E3%81%B0%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
上記「4.付点のはなし」の中に、以下のように書かれている。
古い時代の楽譜には、こんな付点も登場します(矢印部分)。これはもちろんインクのシミなんかではありません。これも歴とした「付点」です。
付点は、もとの音符の半分の長さを持っています。つまり、現代風に直すと下の譜例のようになるわけです。
時代によって、楽譜もさまざまに変わってきている、その1つの例です。

小節をまたぐ付点.jpg

以上から結論としては、
「・」は小節をまたぐ付点であり、前小節の最後の音符の半分の音価を持っている音符
ということになる。

上記の記述ではいずれも「昔/古い時代」と書かれていたが、驚いたことにブラームスもこの書き方をしているようである。
http://shiranehjo.blog.fc2.com/blog-entry-61.html

この記事へのコメント

jsbachpro
2022年09月24日 10:04
パチパチパチ、またお教えいただき、感謝いたします。ブラームスのジムロックの印刷譜面を確認しましたが、その通りでした。さらにチェロへの編曲譜も見ましたが、クレンゲルの編曲であったためか、現在の慣例通りの記譜であり、私もチェロ編曲にて昔必死に練習したものですが、気が付かなかったです。いつも本当にありがとうございます。ブラボー!(少し前になりますが、これも教えていただいた「ブラームスを演奏する」の書籍を読み、その時はブラームスがすぐ身近に感じられたのですが、今回の記譜も同様です。)あー知らなんだ
Zauberfloete
2022年09月25日 21:10
jsbachproさま
コメントありがとうございます。
私も問題が解決してスッキリしているところです。
インターネットには有用な情報がまだまだあることを実感しました。